こんにちは。行政書士の加藤です。
今回は、先日投稿した動画「補助金って行政書士の独占になっちゃうの!?改正行政書士法と補助金制度の今後について徹底解説」の内容を、より詳しく、そして条文等の資料も交えながらブログ記事としてまとめました。
2026年1月1日より、新しい「行政書士法」がいよいよ施行されます。
この改正、士業界隈やコンサルタント業界では以前から話題になっていましたが、ついにその時が間近に迫ってきました。
特に、現在「補助金コンサルタント」として活動されている方や、これから補助金業務を扱おうと考えている行政書士の方にとって、今回の改正は「廃業のリスク」と「新たなビジネスチャンス」の両面を含んだ非常に重要な転換点です。
「行政書士じゃないけど、今まで通り補助金サポートをしていいの?」
「書類作成の代行はどこまでがアウトで、どこまでがセーフ?」
「結局、補助金業務は行政書士だけのものになってしまうのか?」
動画では語りきれなかった条文の解釈や、現場でのリアルな実務運用のお話を含め、「自分の身を守り、かつお客様に迷惑をかけないための知識」を徹底解説していきます。
かなり踏み込んだ内容になりますが、ぜひ最後までお付き合いください。
1. 結論:補助金業務は「行政書士の独占」になるのか?
まず、皆さんが一番気になっている結論から申し上げます。
巷では「改正法によって、補助金業務は完全に行政書士の独占業務になる」という噂が流れていますが、結論としては、補助金業務すべてが行政書士の独占業務になるわけではありません。
まずはご安心ください。行政書士資格を持っていないコンサルタントの方が、明日から一切補助金に関われなくなる、というわけではないのです。
しかし、ここで安心して思考停止するのは非常に危険です。
「独占業務にはならない」=「今まで通りで大丈夫」ではありません。
むしろ、「今まで通りのやり方をしていたら、刑事罰を受ける可能性が出てきた」というのが今回の改正の恐ろしいところです。
一言で「大丈夫」とは言えない、非常に大きな落とし穴が隠されています。ここからは、その「落とし穴」の正体について、実際の法律を見ながら紐解いていきましょう。
2. 改正行政書士法で何が変わる?(条文解説)
今回の改正で最も重要なポイントは、「書類作成業務の独占」に関する規定の厳格化です。
まずは、実際の条文(改正後のもの)を見てみましょう。特に重要な部分を引用します。
行政書士の業務(独占業務)について
行政書士法
第一条の三 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)を作成することを業とする。
これが、いわゆる行政書士の「独占業務」を定めた条文です。
ポイントは「官公署に提出する書類の作成」です。
補助金申請における「事業計画書」や「申請様式」は、国や自治体(官公署)に提出する書類にあたります。これを作成することは、以前から行政書士の業務範囲でした。
ちなみに、これは紙の書類だけでなく、電子申請システム上で入力して作成するデータも含まれます。
そして、今回最も注目すべきなのが、行政書士以外の人がこれを行った場合の禁止規定(第19条)です。ここが今回の改正の肝です。
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。(以下略)
お気づきでしょうか?
「いかなる名目によるかを問わず」という文言が入っています。
実はこれまでも、無資格者が報酬を得て書類作成を行うことは禁止されていました。しかし、実務の現場では、以下のような「言い訳」がまかり通っていた事実があります。
「書類作成費用はもらっていません。あくまで『コンサルティング料』として報酬をもらっていて、書類作成はそのおまけ(サービス)でやっています」
「着手金はゼロです。成功報酬はあくまで『採択されたこと』への対価であり、書類作成の対価ではありません」
日本行政書士会連合会としても、これらは本来アウトだという認識でしたが、法律の文言上、これらの「名目を変えた言い訳」を完全に封じ込めるのが難しく、グレーゾーンとして放置されてきた経緯があります。
しかし、今回の改正で「いかなる名目によるかを問わず」と明記されました。
これにより、以下のような主張は一切通用しなくなります。
「サービスで書きました」
「コンサル料に含まれています」
「通信費として受け取りました」
お金(報酬)をもらっている以上、そのプロセスで書類作成を代行していれば、どんな名目をつけようが「行政書士法違反」となります。
今まで「グレーだから大丈夫」と綱渡りをしていた業務フローは、2026年1月1日以降、「完全なブラック(違法行為)」へと変わるのです。
3. 違反した場合のペナルティ(罰則の強化)
「違法と言っても、バレなきゃいいんでしょ?」「大した罰じゃないんでしょ?」
そう思っている方がいたら、すぐに考えを改めてください。今回の改正では、罰則もしっかりと規定されています。
(罰則)
第二十一条の二 第十九条第一項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
なんと、「1年以下の拘禁刑」または「100万円以下の罰金」です。
行政罰ではなく、れっきとした刑事罰です。警察のお世話になる話です。
さらに恐ろしいのが、「両罰規定」です。
第二十三条の三 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第二十一条の二(中略)の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
つまり、コンサル会社の従業員が「お客様のために」と良かれと思って勝手に書類を作成した場合、その従業員本人だけでなく、雇っている会社(法人)にも罰金刑が科されます。
「社員が勝手にやったこと」では済まされません。会社全体の信用問題に関わりますし、今後のビジネスが立ち行かなくなるリスクがあります。
今後は警察や行政等の取り締まりも強化されることが予想されます。「今まで大丈夫だったから」という経験則は、一旦すべて捨ててください。
4. 「今までと変わりはない」という言葉の罠
ここで一つ、注意喚起をしておきたいことがあります。
今回の法改正を巡っては、国会の答弁や経済産業省、日本行政書士会連合会などの声明の中で、「(補助金業務に関しては)今までと変わりはないですよ」といった趣旨の発言を耳にすることがあるかもしれません。
これを聞いて、「あ、じゃあ今まで通りのやり方(書類作成代行含む)でいいんだ!」と解釈するのは大きな間違いです。
彼らが言う「今までと変わりはない」というのは、以下の意味です。
「今までも(本当は)違法だったものが、引き続き違法であることに変わりはない(ただ、より明確に厳しくなりましたよ)」
つまり、「今までが真っ白(適法)だったから、これからも白ですよ」という意味ではなく、「今までも黒だったけど、これからは言い逃れできない漆黒になりますよ」という意味での「変わりはない」なのです。ここを履き違えると、痛い目を見ることになります。
5. 実際の補助金実務はどうなる?(作成代行の是非)
ここまで法律の話をしてきましたが、ここからは「じゃあ実務の現場はどうなるの?」というリアルな話をしていきましょう。
そもそも「作成代行」は誰ができるのか?
先ほどの条文(第1条の3)にあった通り、官公署に提出する書類の作成は行政書士の独占業務です。
では、補助金コンサル(中小企業診断士など)は手出しできないとして、「行政書士なら、堂々と事業計画書を全部作ってあげていいのか?」という疑問が湧きます。
ここで重要になってくるのが、各補助金の「公募要領」です。
現在の主要な補助金(ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金など)の公募要領には、多くの場合、以下のような趣旨の記載があります。
「事業計画書は、申請者自身が作成してください」
補助金は税金を原資とした給付行政です。事業主本人が「これからどう事業を成長させるか」を考えることに意味があるのであって、コンサルタントや行政書士が丸投げされて作った作文にお金を出す制度ではありません。
つまり、現在の補助金制度のルールの下では、「行政書士であっても、作成代行(丸投げ作成)は推奨されていない(あるいは禁止されている)」というケースがほとんどなのです。
そう考えると、実は「事業計画の作成フェーズ」においては、無資格のコンサルタントも行政書士も、立場はほとんど変わりません。
コンサルタント: 行政書士法により作成代行はできない。本人が書くのを支援(助言)するのはOK。
行政書士: 行政書士法上は作成できるが、補助金ルール上「本人が書いてね」と言われている。
どちらにせよ、「お客様(申請者)自身に書いてもらい、それをプロとして横からアドバイスする」というスタイルが、唯一の正解となります。
この「アドバイス・助言」の範囲であれば、行政書士法第1条の3の「作成」には当たりませんので、コンサルタントの方も問題なく業務を行えます。
ただし、「違反時のリスク」は雲泥の差
「じゃあ行政書士なんていらないじゃん」と思われるかもしれませんが、ここで決定的な違いがあります。
それは、「万が一、作成代行をしてしまった(線を越えてしまった)時のペナルティの違い」です。
行政書士が代行してしまった場合:
行政書士法上の「業」としては認められている行為です。補助金のルール違反(採択取り消し等)にはなりますが、行政書士法違反で逮捕されることはありません。
コンサルタントが代行してしまった場合:
補助金のルール違反(採択取り消し)になるだけでなく、「行政書士法違反」として刑事罰(1年以下の拘禁刑など)の対象になります。
お客様からすれば「採択取り消し」はどちらも同じダメージですが、支援者側にとってのリスクは比較になりません。
コンサルタントの方は、「バレたら逮捕」という爆弾を抱えながら業務をすることになります。だからこそ、今後は「作成は絶対にしない。あくまで助言に徹する」というライン引きを、今まで以上に徹底する必要があります。
6. 今後のトレンド:申請手続きは「行政書士必須」へ?
さて、ここまでは「作成」の話でしたが、実はもう一つ重要なフェーズがあります。それが「提出(申請)」のフェーズです。
申請代行と行政書士法
改正行政書士法には、以下の条文もあります。
第一条の四 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。(中略)
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続(中略)について代理すること。
これは「提出手続きの代理」についての規定です。現行法では、ここは行政書士の独占業務ではありません(非独占業務)。
しかし、最近の補助金の動きを見ていると、ここに変化の兆しがあります。
「省力化投資補助金」に見る未来
すでに始まっている動きとして、「省力化投資補助金(一般型)」の例を挙げます。
この補助金では、採択された後の「交付申請」の手続きについて、公募要領やシステム上の注意書きに新しい文言が追加されました。
「本事業の交付申請では、申請の手続きを中小企業に代わり第三者が行うことができます。ただし、報酬を受けて官公署に提出する申請手続きの代理で行うものは、行政書士法にて行政書士等に限られていますのでご注意ください」
このように、補助金のルール側で「代理申請をするなら行政書士に限る」と明記し始めたのです。
これは非常に大きな変化です。
これまでは、「電子申請のIDをお客様から預かって(あるいは横で操作して)、コンサルが申請ボタンを押す」という行為が実質的に行われてきましたが、今後はこれが明確にNGとなり、「申請の代理・代行は行政書士しかできない」という流れが、他の補助金にも波及していく可能性が非常に高いです。
7. コンサルと行政書士の「共存」の提案
ここまで読むと、コンサルタントの方は「じゃあもう商売あがったりだ」と悲観されるかもしれませんし、行政書士の方は「よし、全部独占だ!」と意気込むかもしれません。
しかし、私は「敵対」ではなく「共存」こそが、これからの補助金ビジネスの最適解だと考えています。
役割分担の明確化
補助金業務は大きく分けて2つのフェーズがあります。
採択までの戦略フェーズ:
どのような事業を行うか、市場分析、財務計画、強みの抽出など。
手続き・書類作成・申請フェーズ:
要件チェック、書類の整え、システム入力、交付申請、実績報告など。
1の「経営戦略・事業計画」の策定に関しては、中小企業診断士や専門コンサルタントの方の得意分野ですよね。 私も行政書士として日々研鑽していますが、やはり餅は餅屋、戦略のプロフェッショナルには敵わない部分があります。
一方で、2の「書類作成の整合性・手続きの正確さ」に関しては、書類作成のプロである行政書士の独占領域(得意分野)です。
新しいパートナーシップの形
これからは、一人の支援者が最初から最後まで全部やるのではなく、以下のようなタッグを組むのが理想的ではないでしょうか。
メインのコンサル(診断士等):
事業計画の策定支援、戦略アドバイスを担当し、成功報酬のメインを受け取る。
パートナー行政書士:
法的にリスクのある「書類の最終作成」や「電子申請の代理」、「交付申請の手続き」を担当し、固定報酬(書類作成費)を受け取る。
このように業務を切り分けることで、コンサルタント側は「行政書士法違反」のリスクを完全に回避でき、行政書士側は得意な手続き業務に集中できます。そして何より、お客様(事業者)にとっては、戦略と手続き、両方のプロがついてくれることで、採択率やその後の事業成功率が高まるはずです。
「行政書士の独占だ!」という言葉が一人歩きして、行政書士が無理に戦略コンサルに手を出したり、コンサルタントがリスクを冒して書類を作ったりするのではなく、お互いの得意分野を尊重して手を組む。
これからの時代は、そういった「健全なチーム」が選ばれる時代になると思います。
8. まとめ:2026年に向けて今やるべきこと
長くなりましたが、今回の改正行政書士法と補助金業務についてのまとめです。
法律が変わります(2026/1/1〜):
「書類作成の代行」は、いかなる名目であっても報酬を得ていれば、行政書士以外は完全アウトになります。
言い訳は通用しません:
「サービスでやってる」「コンサル料の一部」という理屈は通じません。違反すれば刑事罰(1年以下の拘禁刑等)があり、会社も罰せられます。
実務上の注意:
事業計画書のアドバイス(助言)はOKですが、「作成(代筆・入力代行)」は絶対にやめましょう。お客様に「自分で書いてください」と指導するスタイルを徹底してください。
将来の展望:
申請手続き(特に交付申請以降)に関しては、行政書士に限定される動きが出てきています(例:省力化投資補助金)。
おすすめの戦略:
コンサルタントと行政書士がタッグを組み、役割分担(戦略支援 vs 手続き代行)をする「共存モデル」を構築しましょう。
最後に
行政書士法改正は、決して「行政書士の既得権益を守るため」だけのものではありません。
わけのわからないブローカーや悪質な業者が、適当な書類を作って補助金をかすめ取るような事態を防ぎ、真面目に事業を行おうとしている中小企業を守るための改正でもあります。
今までこっそりと作成代行をしていた方は、これを機に業務フローを抜本的に見直してください。
「お客様のために」と思うのであればこそ、法律を守り、クリーンな形でサポートをすることが一番の誠意です。
行政書士側も、ただ「法律で守られた」とあぐらをかくのではなく、コンサルタントの方々に負けないような事業理解・経営知識を身につけ、真のパートナーとして選ばれる努力が必要です。
私の事務所でも、全国のコンサルタント様や士業の先生方との連携を歓迎しております。
「書類作成部分だけお願いしたい」「法的にクリアなスキームを一緒に考えたい」というご相談があれば、ぜひお声がけください。
この改正を「ピンチ」と捉えるか、「業界健全化のチャンス」と捉えるか。
ぜひ一緒に、胸を張ってお客様を支援できる体制を作っていきましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
このブログ記事の内容は動画でも解説していますので、復習がてらぜひ動画の方もチェックしてみてください。
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